あ  と  が  き

税務調査五輪の書 抜粋
あ  と  が  き
   宮本武蔵の五輪書 (講談社発行 宮本武蔵著 鎌田茂雄全訳注)を熟読すればするほど、 税務調査の世界に通じるものがある。  
宮本武蔵は、 剣の道を ①地之巻 ②水之巻 ③火之巻 ④風之巻 ⑤空之巻 の五巻にまとめているのであるが、
地之巻では、兵法の道を大工の統領に例えて、 「家を建てるに木配りをする事—-大工を使う事、 その上中下を知り—士卒たるものは大工にして、 手づからその道具をとぎ、色々のせめ道具をとぎ、 こしらへ大工の箱に入れて持ち、 統領の云付くる所をうけ」として 木の選び方・人の使い方 ・道具の研き方まで分かりやすく解説しているが、 木の選び方は税務調査の選定に通じ、 人の使い方は、 組調査の人員配置・道具の使い方は 税務調査の攻めの道具であるパソコンの活用までも示唆している。
  水之巻では、 二天一流の細やかな動きを記した極意書の中心の巻ではあるが、 「心の内にごらず、広くして、ひろき所へ知恵を置くべき也、 知恵も心もしひたすらみがく事専也、天下の利非をわきまえ、 物事の善し悪しをり、よろづの芸能、其道其道をわたり、 世間の人にだまされざるようにして後、 兵法の知恵となる心也」として、 租税正義の心の持ちようまでも解説している。

火之巻では、合戦のことを記載した巻であるが、 「物事の景気という事は、我が智力つよければ、必ずみゆる所也。 兵法自由の身になりては、 敵の心よく計りて勝つ道多かるべき事也。」として、 税務調査のプロになれば、 自ずと脱税の手口は見えてくると言っているようである。

風の巻では、他流派のさまざまな兵法を記した巻であるが、 「我が一流においては太刀に奥口なし、構えに極まりなし。 唯心を持って其の徳をわきまゆる事、是兵法の肝心也。」 として税務調査も色々な手法があるが、 心の正しい動きによって、 はじめて達成できると言っているように聴こえる。
空の巻では、兵法者としての真髄を述べた巻であるが、 「心意二つの心をみがき、観見二つの目をとぎ、少しも曇りなく、 迷いの雲晴れたるところこそ、真の空と知るべき也。」として、 究極の税務調査の極意を教示している。  税務調査の世界も、非常に奥が深く、 第六感を書き尽くすことはできないが、所得隠しや申告漏れは、 人間の作為行為であり、 申告書等に何らかの形跡残しているものであり、 それらを読み取ることが求められているのが、 国税職員であり、税理士であると考えている。
この書を一読していただいても、税務調査の的確な選定や、 税務調査の対処法がすべて理解できるとは思っていないが、 武蔵の言葉を借りれば、 「一流の剣術、大形(おおかた)此巻きに記し置く事也—– この一書の内を一ヶ条一ヶ条と稽古して—— 千里の道も一足宛(ずつ)はこぶなり」である。  税務調査も最終的には、 人と人の魂のぶつかりではなかったかと思っている。  この書の目的は、(はじめに)でも述べたとおり、 納税者・税理士先生・国税職員の皆様方が、 税務運営方針に示されている 「適正な自主申告と納税」の一助なればと思って執筆した。

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