税務調査から企業を守る税務自主監査

税務調査五輪の書 抜粋

税務調査五輪の書 抜粋

1. 総合調査導入の背景と税理士法の改正
(1)総合調査導入の背景  
 小泉首相直属の「経済財政諮問会議」は、向こう10年間で国家公務員を25%削減する 方針を提言している。 このことを税務署の現場に当てはめると、どのようになるのであろうか?
 税務署の定員は、納税者数や徴収額・滞納額で査定されていると思われるが、総務課や管
理・徴収部門・各税総括部門の内部事務担当者は、OA化を図ったとしても、そう多くの人員
削減は無理ではないかと推察する。となれば削減の対象は、自ずと各税の外部事務担当者等
(調査部門等)に絞られてくる。  
それでは、各税の調査部門の削減割合はどの位になるのであろうか?   


あくまで個人的試算であるが、A税務署で試算すると、定員は、175人であった。
削減目標25%を掛けると43.75人、四捨五入すると削減人員は、44人になる。  
務課・管理・徴収部門・各税の総括部門の職員83人を差し引くと92人となり、
調査 部門等の削減割合は、実に48%となる


この署の例からも、国家公務員25%の定員削減方針が国税庁においても完全実施されれ ば、10年後には調査人員等を大幅に縮少せざるを得ないのではと思われる。   
この調査人員削減問題に対応していくために導入されたのが、複数税目を同時に調査する 総合調査部門という新たなる課税部門の設置であったと考えている。
従来からも国税局資料調査課の調査権限は、全税目に及んでいたが、調査対象者の選定母体 が、課税一部資料調査一課が所得税、課税一部資料調査二課が資産税、課税二部一課・二課 が法人税となっていたことより、縦割りの中での調査対象者の選定となっていることより、 総合調査の使命とは異なるものであった。     
 従来の個人・資産・法人といった税目別の縦割り税務行政から、一大転換を図ったことに
なる。

 一つの調査部門に、多税目の調査を分担させればどうなるのか?  
 調査の効率は上がるのか、下がるのか?
 平成12年7月、全国で28署の総合調査部門が誕生した。

 総合調査部門の使命は、多額の資産を有する法人経営者等、特定の個人及びその関係法人 グループで、複数税目の観点から課税上の問題が多く伏在する納税者を選定するのと同時に、 従来の縦割り調査の弊害を排除した「新たな調査手法の開発」であった。  
 なお、総合調査部門の主務課は、国税局では課税一部課税総括課であり、国税庁では、課
税部課税総括課である。

 
(2)税理士法の改正  
 一方、税理士法の改正も行われ、第33条の2の書面添付の税理士に対しては、同法第3
5条の第1項により審査内容の意見聴取義務が税務署側に求められるようになり、税理士の
役割も大きく高まったこととも、何か関連付けられるように感じている。  
 現職時、この税理士法の改正条文を見て、「税務署にとって書面添付法人の調査が、やり
にくくなったな。」という思いであった。
従来から、書面添付制度はあったが、意見聴取制度が定められていなかった為、提出のメ
リットもなく税理士先生方のみに責任が重いという世界であった。また、同制度にも基づく
提出割合も、数パーセントに低迷していたのが現状であった。
 今回税理士法の改正による意見聴取の是非は、税理士会内部においても色々な意見が噴出
しているが、筆者個人としては、国税当局の非常に大きな譲歩であると考えている。
税理士という一個人の監査能力に対して税務調査と言う公権力の行使を一部制限する意味
合いを持つからである。
 国税当局の運用いかんによっては、税務調査回避の道も開かれ、税務署と税理士の協調体
制がより強固なものになると確信しているからである。

そのための条件としては、税理士としても税務調査の選定ポイントを十分理解して、申告
書から見える問題点もクリアしておかなければならないし、意見聴取の段階で、自主監査事
項を積極的に説明する必要があるものと考えている。
意見聴取の段階で、書面添付制度の監査項目と税務調査の選定ポイントが一致すれば、税
務調査を実施する必要がなく、当然税務調査は回避されるものと考えている。
仮に、一致しない場合でも、具体的な指摘がない限り、着手前の自主修正の道は残されてお
り、当然加算税の対象とはならないのである。
 書面添付制度を実行あるものにするためには、税務調査の選定ポイントを十分熟知する必
要があり、そのためにも当書が、十分役立つものと考えている。
また、従来の税理士業務とは異なる、税務監査専門の税理士も求められるようになってく
るものと期待している。その理由は、税務自主監査業務の開設の項でも詳述するが、税務調
査が必要と判断された納税者が、税務調査を受ければ、非常に高い確率で申告漏れが把握さ れているのも現実であるからである。

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